第5回ざぶんSDGs大賞 受賞団体
水産庁長官賞/GLOCAL SDGs賞
海と大地をつなぐ 廃棄物ゼロへの取り組み
団体概要
- 団体名
- 長崎県立諫早農業高等学校 生物工学部 廃棄物を資源化 プロジェクトチーム
- 活動期間
- 2021年11月 〜(年300回)
- 継続予定
- 8年〜
- 構成人数
- 高校生8名
- SDGsテーマ
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活動内容
食の循環が未来をつくる
農業・水産業から発生する食品廃棄物を資源化する活動を行っている。国内では事業系食品ロスの削減が進むなか、家庭系食品ロスはそのまま廃棄されている現状にある。また、長崎県は水産資源が豊富であるが、加工した際に発生する廃棄部分は処分している現状でもあった。そこで、対馬市と連携して家庭から発生する食品残渣を堆肥として「製品名:堆ひっこ」を完成させた。また魚の廃棄物を液体化したもの(以降、魚液肥と呼称)を農業に活用することで、地域の問題解決に繋がると考えた。【栽培編】県の特産品である馬鈴薯に活用し、堆ひっこのみ(化学肥料不使用)の栽培で、県の目標収量を大きく超える結果となった(令和5年)しかし、現場の農家から「堆ひっこは粉状のため、機械では散布がしにくい」という意見から、形状を粒状にした「新堆ひっこ」を開発した。再実験の結果も良好であり、十分栽培農家で実用可能であることを証明(令和6・7年)また、魚液肥を活用した栽培実験も行った。実験区分として、一般堆肥(市販品)、実験区(元肥+魚液肥)と(魚液肥+高度化成肥料)を設定し、一般堆肥と魚液肥の比較実験を行った。結果は、生育・収量ともに安定しており一般堆肥と同様だったことから、 魚液肥は一般堆肥と同様に使用が可能と考える(令和7年)【エコフィード編】「堆ひっこ」が食品残渣のみで作られていることに着目し、エコフィード化について研究を開始。給餌時間などを工夫し、一般飼料に3 0%添加して、採餌量、採卵量、卵重、体重、卵の食味について調査した結果、一般飼料のみと同様の数値だった。また、専門機関に分析依頼した結果、通常飼育のものよりも高品質卵の生産にも成功した(令和5・6年)しかし、専門機関より鶏が食べやすい餌の形状について助言いただき、ペレット化実験を開始した。「堆ひっこ」に魚液肥を5~80%添加していき、70%添加にてペレット化に成功した。ペレット化した餌にて嗜好性実験を行った結果、ペレットのサイズを工夫することで、昨年の実験よりも採餌率が10%も向上した(令和7年)【普及・情報発信】こども園にて園児と共に「堆ひっこ」を活用した野菜栽培や紙芝居などの食育活動を継続し、食育実践例として全国冊子にも掲載。また、内閣府首相官邸公式SNSや、令和7年発行の「食料・農業・農村白書」にも私たちの取り組みが紹介され、全国・世界に向けて情報を発信した。
活動をはじめたきっかけ
海のめぐみを無駄にしない挑戦
長崎県の漁業生産量は286,000トン(2016年)と、北海道に次いで全国2位を誇っている。また、多種多様な魚介類が水揚げされており、これらを用いた水産加工品の製造過程で頭や骨、内臓など廃棄され部位も多く、1匹あたり体重の40%近くを廃棄されていることを知った。漁業が盛んな長崎だからこそ、水産廃棄物を資源として、活用できれば、海洋国日本にとって大きな意味がある活動になると強く感じた。また、長崎県の離島対馬では、島外に食料を依存している現状であるにも関わらず大量の食品ロスが発生している。国内では令和の米騒動が叫ばれる中、大量の食品ロスが廃棄されている。授業では食糧生産を支えている肥料・飼料ともに国内自給率は低水準であることを学習した。そこで、家庭系食品ロスを農業へ活用し、生産コストの削減及び、食の安定供給を目指した。食品廃棄物も水産廃棄物も無駄なく活用し資源化を行うためにも活動を開始した。
活動を通して学んだことや感じたこと
廃棄物から考える未来の食と環境
日本は食料・肥料・飼料の自給率が低く、海外に依存していることや、国際情勢の悪化により、食料生産コストが高騰していること、化学肥料の多用が、河川や海の富栄養化を起こしていることを学んだ。また、長崎県内の豊富な水産資源から大量の廃棄物が発生していること、連携企業(福岡酸素(株)・KTX(株))などと協力することで、水産資源の活用が新たな食料生産に繋がること、食や命の循環が私たちの生活を支えることを学んだ。また、連携の中で対馬を訪れた際に、対馬の海洋ごみ問題についても学んだ。対馬は韓国との距離が近く、対馬海流によって海洋ごみが大量に漂着している。リサイクル場には、処理しきれないほどのプラスチックごみと流木が山となっていた。海の環境問題と向き合っていた対馬だからこそ、この食品リサイクル活動を始めたと考える。海と陸で場所は違うが、環境のために活動をすることで互いにいい環境を作ることができると感じた。
活動継続のためにしている工夫
資源循環を広げるために
今年度から開始した水産業とのさらなる連携の構築。生産した物を専門機関で分析を行うなどし、データを集めていきたい。また、食育活動をより多くのこども園で実施することで、「食の大切さ」を、栽培を通じて教えていきたい。私たちの取り組みを、日本のみならず海外にも普及を行うためにインスタグラムなど公式SNSを活用することで、食品ロス問題に対する考えを変えることになると思う。さらに、栽培実験やエコフィード実験を継続し、多くの農家の方にも食品残渣堆肥や魚液肥などを使用してもらい、地域の特産品に活用してもらえるよう取り組んでいきたい。食品廃棄物も水産廃棄物も無駄なく活用して、資源の少ない日本だからこその取り組みとして、世界に広めていき食品ロス廃棄量の削減に繋がると考える。私たちの活動は、多くの方々に知ってもらえることで廃棄物を削減することにも繋がると考え活動を行っていく。
活動略歴
- 2021年~2023年の主な活動
- 家庭系食品残渣「堆ひっこ」を対馬市と連携し完成
- 県内の全小学5年生を対象とした食育カレンダー制作・配布
- 「堆ひっこ」を活用したエコフィード比較実験
- 地元こども園にて段ボールコンポスト作成
- 全国農業新聞で活動を掲載
- 2024年~2025年の主な活動
- 内閣府首相官邸公式SNSにてG7諸国向けに情報発信
- 地元こども園にて「堆ひっこ」を活用した食育活動
- 幼稚園全国冊子にてこども園での取り組みを紹介
- 食品ロスジャーナリスト(井出留美様)の取材により 活動を書籍化
- 魚液肥を使用したペレット化作成実験を開始
- ペレット化を使用したエコフィード実験を開始
- 令和7年度の食料・農村・農業白書に活動が公開
選考委員からのメッセージ
起業して会社をつくりましょう。長崎の水産資源からでる廃棄物をどんどん資源化していってください。
実験を通じた実用化に向けた活動は安心感や評価につながっており、今後の有効活用への期待感が膨らみます。