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文部科学大臣賞/審査員特別賞/環境SDGs賞

ど根生効果が導いた農業の新発見

団体概要

団体名
宮城県農業高等学校 農業経営者クラブ
活動期間
2023年4月〜(年5回)
継続予定
3年
構成人数
高校生10名・大人2名
SDGsテーマ
新肥料とヤンマーさんと共同開発した新しい田植機が完成した。
この研究は農林水産省に認められて、 2025年5月30日国会に提出され、採択された。▶︎

選考委員からのメッセージ

失敗しても諦めなかったことがまさに実を結び、コストや労働面でも軽減できているのがすごい。「ど根性効果」のネーミングも素晴らしい。

一つの大失敗から得た発見の連続は新肥料の開発を生み出し、農業関連メーカーをも動かす画期的な取組です。

活動内容

新肥料が変える農業と地球の未来

 私たちの活動は「肥料価格の高騰」と「環境負荷」という二つの課題から始まりました。農業法人から「肥料が高くて買えない」と相談を受け、価格を調べると54.7%も値上がりしていました。打開策が見つからず悩んでいた矢先、田植えで肥料を入れ忘れるという大失敗をしました。ところが、後から追肥を行うと、通常の3分の1の肥料でも収量や味が変わらなかったのです。稲を抜いて調べると根が3.7倍、重量は10倍以上。肥料がないからこそ根が必死に伸びる、この現象を「ど根生効果」と名付けました。実験を重ねて、この効果は偶然ではない再現性があることを確信しました。さらに88年前のブドウの栄養周期理論と一致していることを突き止め、これは最初に肥料を与えないことで発根を促進し、その後は少ない肥料でよく育つという理論で水稲にも応用できると仮説を立てました。課題は「追肥作業の重労働」をなくすこと。そこで田植機で施肥でき、追肥と同じ効果を持つ「世界初の新肥料」開発に挑みました。
 何度も失敗を繰り返した末に完成したのが「Re:温故知新」です。旧来の肥料6kgに対し、新肥料2kgで同等の収量を実現し、根は1.4倍に伸び、味は最高値を記録しました。専門家からも「稲作を変える新しい肥料」と高い評価を得ました。特許も出願し、肥料メーカーと全国商品化を進めています。導入すれば肥料費は78%削減、労務費も62%減となり、農業法人は年間300万円の利益増につながります。
 さらに、この活動は環境問題の解決にも直結します。窒素肥料の過剰使用は地下水や河川を汚染するだけでなく、一酸化二窒素を発生させます。これは二酸化炭素の300倍もの温室効果を持ち、農業由来排出の82%を占める最大の要因です。新肥料を普及させれば、地球温暖化の抑制に大きく貢献できるのです。
 私たちはメディアを通じて全国の農業法人へ普及活動を開始しました。シンプルに「新肥料に切り替えるだけ」で効果が得られるため、導入障壁は低く、反響は大きいです。国内外の大会で研究発表することで農林水産省において発表することができたのです。今年の5月30日には国会資料としても採択されました。現在は協力してくれる企業も増えています。稲は世界三大作物の一つであり、この肥料は他作物にも応用可能です。世界に広げれば、農業のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

活動をはじめたきっかけ

ど根生効果が生まれた瞬間

 私たちが活動を始めたきっかけは、地元農業法人からの「肥料が高くて買えない」という切実な声でした。調べると肥料価格は54.7%も高騰しており、農業経営を圧迫していました。どうにか打開策を探していたとき、偶然にも大きな転機が訪れました。田植えの際に肥料を入れ忘れるという大失敗をしてしまったのです。慌てて少量の追肥をしましたが、先生からは「もう諦めろ」と言われました。しかし、諦めずに観察を続けた結果、肥料を3分の1しか使っていないにもかかわらず、収量も味も通常の田んぼと変わらないことを発見しました。稲を抜いてみると根が驚くほど多く、強く張っていたのです。この「ど根生効果」と名付けた現象は、肥料がないからこそ根が必死に養分を求め、強く育つ仕組みでした。農家を救い、環境にもつながる可能性を秘めたこの発見が、私たちの挑戦の出発点となりました。

活動を通して学んだことや感じたこと

失敗が教えてくれた新しい可能性

 活動を通して私が最も強く学んだのは、「失敗こそが大きな発見の入口である」ということです。肥料を入れ忘れるという致命的な失敗から、根が必死に養分を求めて伸びる「ど根生効果」を発見できました。諦めずに観察を続ける姿勢が、新しい肥料の開発や環境改善の糸口につながったのです。また、研究を進める中で「当たり前を疑うことの大切さ」も学びました。多くの会社にこの話をするとほとんどの人が「信じられない」「そんなはずはない」といいます。それだけ、セオリーからは大きく外れた研究だったのです。しかし、実物の根や研究データを見せると、全ての大人の人が「これはすごい」と信じてくれます。現在では肥料会社、農業機械メーカー、農薬メーカー、農業資材メーカーから様々な研究を依頼されるようになったのです。従来の常識に縛られず、視点を変えて考えることで、新しい可能性が拓けることを実感しました。

活動継続のためにしている工夫

後輩へ受け継ぐ挑戦

 今後活動を継続するために後輩に引き継ぐことをしています。この研究は作物部門、農業経営者クラブの共同研究です。2年生から選択科目で選ぶ作物部門に加え、1年生から入れる農業経営者クラブで一緒に行うことで先輩から後輩への引継ぎをスムーズに行い、研究への支障がないようにしています。そして、作物部門は課題研究という授業の時間で、農業経営者クラブは放課後に研究を行い分業と協力をすることで、研究の進展速度を速めることにつながっています。今後は機械メーカー、肥料会社と協力し新肥料用のアタッチメントを開発を行っていきます。

肥料を入れ忘れたが根を抜いてみると驚きの発根数。 この発見から肥料が少なくても育てられると仮説を構築した。
肥料会社にお願いして作った、肥料が3分の1まで減らしても育てられる新肥料の完成

活動略歴

2023年5月
肥料を入れ忘れる大失敗を犯す
2023年6月
追肥を行う。肥料は3分の1
2023年7月
生育がかわらないことを発見
2023年10月
収量がかわらないことを発見
2023年11月
根が伸びることで少ない肥料でも育つ「ど根生効果」を発見
2024年3月
肥料会社とゆっくり溶ける新肥料を共同開発
2024年5月
田植えを行い前年度と同じ効果を確認
2024年6月
YANMARと新肥料を使うための田植え機開発を開始
2024年10月
新肥料でも「ど根生効果」の発現を確認
2025年1月
農林水産省にて発表。認められる
2025年4月
肥料・施肥法・農業機械で特許申請
2025年5月
YANMARと開発した新肥料専用の田植機が完成 新装置の田植え機で田植え 国会資料として採択稲刈り。
2025年9月
新肥料と新田植機の効果が認められ、 肥料を3分の1でもお米がとれる技術となる